【やさしく学べるWeb制作】プロジェクト成功の鍵:バッファと不確実性コーンを理解する
高橋 雪
システム開発では、初期段階で正確な費用がわかることは、ほとんどありません。
初期段階では、詳細仕様が不明確だったり、まだ見えていない要求があるためです。
そのため、どのベンダー(開発会社)もバッファを乗せていることが殆どです。
ですが、バッファを入れると当然その分、見積りは高くなります。
お客様からすると「高すぎる」「盛っているんじゃないか?」となりがちですが、そもそもなぜバッファが必要なのでしょうか。
バッファの必要性がわかる「不確実性コーン」の概念
見積りやバッファについて考える時に、よく使われるのが「不確実性コーン」の図です。
プロジェクトの初期段階では見積もりの不確実性が高く、プロジェクトが進むにつれて不確実性が徐々に減少していくことを視覚的に表現したものです。
▼見積もりの誤差
プロジェクト開始時からプロジェクト終盤の見積もりの誤差はおおよそ、以下の通りです。
・プロジェクト開始時:実際の値の0.25倍~4倍
・要件定義後:0.5倍~2倍の範囲
・詳細設計後:0.8倍~1.25倍の範囲
・プロジェクト終盤:0.9倍~1.1倍の範囲
なお、不確実性コーンはウォーターフォール型を前提としていますが、アジャイル開発にも影響を与えています。
バッファについて、どう説明する?
初めから「初期段階では正確な見積もりができないので、大きなブレを防ぐためにバッファを乗せている」と伝えてしまうのが早いでしょう。
お客様は「なるべくコスト抑えて、希望を実現したい」と考え、営業担当者も「なるべく安く提案したい」と考えてバッファを削ろうとしがちですが、、最大で160%の誤差が発生することを知っていれば、
バッファを削る=プロジェクトが失敗するリスクを高めるということが理解ができます。
それでも「安くしないと売れない」という場合は、提供しているサービスそのものが、お客様のニーズや期待とズレていたり、過剰だったりする可能性があります。また、サービスの価値をお客様が十分理解できるよう説明できていない場合もあります。
バッファを削る前に、PMF (プロダクト・マーケット・フィット)はしているか、お客様に丁度いいサービスや提案ができているか、提案の仕方に問題がないか、など提供しているサービスの在り方そのものを見直すべきと言えます。
バッファを積まないとどうなるのか
1. スケジュール遅延
バッファがない場合、予想外の問題が発生すると、直ちにスケジュールに影響を与えます。
2. コスト超過
初期段階での計画が楽観的すぎると、予想外の作業が発生した際に対応するために追加コストがかかることがあります。仕様変更や計画修正が発生した場合、調整にかかるコストが増大します。
3. 品質の低下
バッファがない場合、テストやレビューが不十分になり、品質の低下につながる可能性があります。
また、時間がないからと短期的な解決策を優先することで、後々解消が必要となる技術的負債が増えるリスクがあります。
4. チームの負荷増大
スケジュール遅延や予算超過のプレッシャーがチームに影響し、生産性や士気が低下します。
また、リカバリーのために追加のリソースを投入しなければならず、他のプロジェクトにも悪影響を及ぼす可能性があります。
5. ステークホルダーとの信頼低下
バッファを積まずに楽観的な計画を提示すると、遅延や変更が頻発します。
ステークホルダーは初期の計画を前提に意思決定を行っているため、信頼が損なわれる可能性があります。
6. プロジェクトの失敗リスクの増大
致命的な問題が発生すると、大幅なスケジュールや予算の逸脱が起こり、プロジェクトが収束できなくなる可能性があります。つまりプロジェクトの失敗です。
バッファを乗せることで、プロジェクトの成功率が上がる
不確実性コーンの図にもある通り、初期段階の見積もりには大きなブレが発生します。
そのため、バッファを乗せていない場合は、プロジェクトが失敗する可能性が高くなります。
もし見積りを依頼する側なのであれば、「バッファはどのくらい乗っていますか?」と質問することをおすすめします。
バッファを考慮することで、プロジェクトが失敗するリスクを抑え、成功に導くことに繋がります。
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