アジャイル開発のメリット・デメリット! 不安をなくすためにやるべきこと
高橋 雪
生成AIが飛躍的な進歩をしている昨今、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化し、
DXへの取り組みが急務となっています。
DXとセットで提案されているのが「アジャイル開発」の導入です。
しかし、日本の多くのユーザー企業では、アジャイル開発の特性が文化的な壁となり、
導入に慎重な姿勢が見られます。
本記事では、アジャイル開発の導入課題、そして成功の鍵となる「発注者と受注者の信頼関係」の重要性について解説します。
1. DXの段階
一口にDX化といっても、主に3つの段階があります。
以下は段階ごとの取り組み項目と、開発手法・アプローチの一覧です。
まずは、段階に応じた開発手法・アプローチを選択することが重要です。
※上記の表は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)DX動向2024(本文)をもとに、開発手法・アプローチを書き加えています。
※プロジェクトの複雑性によっても適した開発手法・アプローチは異なります。あくまでも一例となります。
▼用語解説
・デザイン思考:人間中心の問題解決アプローチで、主にユーザーの視点を重視し、創造的な発想と反復的なプロセスを通じて、価値あるソリューションを生み出す考え方。
・DevOps(デブオプス):ソフトウェア開発(Development)と運用(Operations)を統合する文化やプラクティス。開発チームと運用チームが協力し、開発~リリース~運用までのサイクルを効率化・自動化することで、迅速かつ高品質なサービス提供の実現を目指す。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の段階ではアジャイル開発が適している
DXの段階に達している場合やプロジェクトでは、アジャイルのアプローチが有効です。
アジャイル開発は、1週間~1ヵ月の短期間(イテレーション)で要件収集・計画・開発・リリース・振り返り(改善)のサイクルを何度も繰り返す手法です。
ウォーターフォール開発では、1度のみこのサイクルを実施します。
反復的なプロセスの中で、発見された課題や新たな要件を次回のイテレーションで反映し、スピーディーなリリースと柔軟性により、プロジェクトが進むごとに価値の高いシステムを作ることが可能です。
課題① 丸投げができない開発手法
アジャイル開発を導入するための課題として、
従来のウォーターフォール型と大きく異なる点は、「丸投げができない」ということです。
アジャイル開発では、一般的にユーザー企業からプロジェクトオーナー(PO)を選出し、ユーザーストーリーでやることリストを作成したり、やることの順番を並び替えたり、何が価値あるものなのかを判断します。ユーザー企業側で意思決定を行うことで、ビジネスの優先順位やニーズの変化に迅速に対応できます。
これは、多くの日本企業にとって文化的な壁となる部分でもありますが、
「ユーザー企業側でビジネス状況の変化に応じて、後からでも柔軟に変更できる」という大きなメリットがあります。
その点を関係者に理解してもらうことが大切です。
課題② スタート段階で正確な納期、予算が確定できない
アジャイル開発では、イテレーションごとに要件を見直し、優先順位をつけて進めていくため、最初に全ての要件や作業量を正確に予測するのが難しいという特性があります。
この点は、特にウォーターフォール型開発を重視してきた企業にとっては大きな課題です。
ただし、アジャイル開発でもスタート時点で主要な機能や目標、おおよその期間やコストを見積もることは可能です。
課題③ 新しい要件を追加した場合は、他の要件を削る必要がある
アジャイル開発では、各イテレーション(スプリントとも呼ばれる)の期間とリソース(チームメンバーや工数など)は固定されています。例えば、1つのイテレーション期間が2週間、チーム全体の稼働可能時間が100時間と決まっている場合、時間内で実現できる優先度の高い作業だけを実施します。
そのため、新しい要件を追加する場合には、他の要件を削る必要があります。
これを「トレードオフ」と呼びます。
なお、削った要件は、次のイテレーションに組み込むことは可能です。
また、イテレーションの回数は調整可能です。
課題④ 日本企業特有の意思決定のスピード
特に日本企業では、意思決定のスピードが導入のハードルとなります。
現場担当者がスピーディーにプロジェクトを進めたくても、上層部の承認待ちで足踏みするケースが非常に多いのです。
アジャイル開発では効率が重要なため、チーム内で疑問や課題が上がるたびに社内に持ち帰って検討する形では遅すぎます。開発チームはその間は作業できずに待ち時間が発生し、最終的にはイテレーションのリズムが崩れ、アジャイル開発のスピード感や良さが損なわれてしまいます。
そのため、プロジェクトオーナー(PO)がその場で即断即決できるよう、ユーザー企業側で権限の委譲を根回しする必要があります。
なお、プロジェクトオーナー(PO)の決定は、ウォーターフォール開発のような「決定事項は絶対に覆せない」というものではありません。間違っていると思ったら次のイテレーションで修正すればよいので、アジャイル開発ならではの柔軟性をポイントに社内調整を行うと良いでしょう。
課題④ 発注者側の負担や責任
アジャイル開発では柔軟に要件を調整できる一方で、プロダクトの最終責任はユーザー企業側にあります。
この点が「発注者がプロジェクトに深く関与しなければならない」という負担となり、
アジャイル開発の採用をためらう原因となっています。
しかし、「自社に本当に必要なものを、素早くリリースして改善できる」という、ユーザー企業側の負担や責任を上回る価値があります。
その点をしっかり理解し、合意形成しておくことが重要です。
信頼関係が成功を左右する
アジャイル開発の導入において、最も重要なのはユーザー企業とベンダー企業の信頼関係です。
そのため、ユーザー企業側は、「ベンダー企業には十分な実力があり、全力で開発に臨んでくれる・不正はしない」、ベンダー企業側は、「ユーザー企業はプロジェクトの当事者として主導し、開発メンバーを尊重し、無茶な依頼はしない」などのお互いの信頼関係が重要です。
信頼関係がしっかり構築されていて、お互いが一つのチームとして機能する関係性があれば、アジャイル開発はとても効果的な開発手法です。
参考情報:
IPA(独立行政法人情報処理推進機構) DX白書 2023
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)DX同行2024(データ集)
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