【やさしく学べるWeb制作】アジャイル開発(スクラム)をやってみよう! ②スクラムの理論
高橋 雪
何かと難しいWeb制作やシステム開発の用語。
このシリーズでは、なるべくわかりやすい説明を目指しています!
前回の記事では、アジャイル開発を始める前の準備について解説しました。
今回は、スプリントを始める前に知っておきたい、スクラムの理論について解説します!
なお、主にスクラムガイド(2020年11月更新版)を参考にしています。
スクラムの定義
スクラムとは、「アジャイル開発を通じて、複雑な問題を解決するのために、人・チーム・組織が価値を生み出す」ためのフレームワーク(枠組み、構造)です。
スクラムの進め方
スクラムには、いくつかのやるべきことがあります。
1. プロダクトオーナーはやることリスト(プロダクトバックログ)を作る
▼プロダクトバックログのイメージ
みんなで話し合いながら、ユーザーストーリーやタスクを洗い出し、優先順位や作業量を見積もって、プロダクトオーナーがまとめたものを「プロダクトバックログ」といいます。
プロダクトバックログは、「プロダクトオーナー(PO)」が責任を持って作成します。
2. スプリントごとに価値のある「インクリメント(成果物)」を作る
スクラムでは、短い期間ごとにやることを決めて、期間内にリリース可能なプロダクトや機能を作ります。
これを「インクリメント(成果物)」と呼びます。
実際にリリース可能でユーザーが使える状態を指します。
■インクリメント(作成物)の例
- 新機能が追加され、実際に操作できる状態になったアプリ
- ユーザーからのフィードバックを反映させた改善が施されたウェブサイト
■デザインや設計はインクリメントになるのか?
「画面デザイン」「要件定義」「設計」「テスト」などだけでは、インクリメントになりません。
成果物を作成する過程での作業としての扱いになります。
3.チームとお客様が、一緒にできたものを確認して、次のスプリントに向けて調整する
チームとお客様全員で話し合いながら、できたものが良いものかを確認します。
そして次のスプリントで何を変えたり、工夫するかを決めます。
4. 繰り返す
1~3の流れを何度も行うことで、だんだん良いものができていきます。
スクラムの理論
スクラムでは、2つの大事な考えがあります。
1つ目は「経験主義」
これは「実際にやってみて学ぼう」という考えで、「知識は経験から生まれる」という信念です。
2つ目は「リーン思考」
これは「ムダを省いて大切なことに集中しよう」という意味です。
不要な作業や、時間の浪費を最小限に抑えることが求められます。
スクラムの三つの柱
スクラムのスプリントが機能するためには、以下の3つが必要とされています。
透明性 | 作業している内容や進み具合が、チーム全員にちゃんと「見える」こと |
検査 | ・進み具合や作成物を定期的にチェックする ・問題があればすぐに修正する |
適応 | ・うまくいかない時や、良いものができない時は、すぐにやり方や内容を変える ・早めに調整する |
スクラムの価値基準
スクラムの成功には、次の 5 つの価値基準が大切です。
・確約 ゴールを達成し、お互いにサポートすることを約束する。
・集中 ゴールに向けて作業に集中する。
・公開 チームとステークホルダーは、作業や課題を公開する。
・尊敬 お互いに尊敬し、関わる人からも尊敬される。
・勇気 正しいことを行うことや、難しい問題に取り組む勇気を持つ。
参考:スクラムガイド(Ken Schwaber & Jeff Sutherland)2020年11⽉版
チームメンバーと責任
前回も説明していますが、スクラムチームには主に3つのロール(責任)があります。
スクラムでは、要件のコントロールをプロダクトオーナー、プロセスのコントロールをスクラムマスターに分離することで、負荷が高くならないようバランスをとっています。
プロダクトオーナー(1名)
プロダクトオーナーは、プロダクトの最終責任者です。プロダクトの価値を最⼤化することに責任を持ちます。ステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーションをとりながら、何を作るかの目標やなぜやるのか?などを明確にして、計画をチームに伝えます。
スクラムマスタ(1名)
スクラムマスターは、スクラムのルールや仕組みをチームがうまく使えるようにするリーダー・進行役です。 スクラムイベントを企画して進行したり、チームがスムーズに働けるように手助けしたり、困っていることを解決するために働きかけます。
※なお、スクラムマスタは管理者ではありません
開発チーム(3人~9人)
開発者は、スプリントの計画を立てて、必要な作業を進めるチームの実行役・クリエイターです。
毎日、進め方を見直して、責任を持ちながら働きます。
スクラムイベント
スクラムでは、以下の5つのイベントがあります。
イベント | 概要 | 説明 | 開催頻度 | 目安時間 |
---|---|---|---|---|
スプリント | 作業期間 | リリース可能なインクリメント(成果物)を作成するための作業期間 | 毎回 (反復) | 1~4週間 |
スプリントプランニング | 作業計画 | スプリントのゴール、プロダクトバックログの選定、タスク詳細を決定するミーティング ※プロダクトバックログをタスク分解・見積りした、スプリントバックログを作成 | スプリント開始時 | 最大8時間(2週間の場合4時間) |
デイリースクラム | 日次報告 | 毎日行う短いミーティングで、各メンバーが進捗を報告し、障害を共有する | 毎日 | 15分 |
スプリントレビュー | 成果物確認 | 成果物をステークホルダーに示し、フィードバックを得る | スプリント終了時 | 最大4時間(2週間の場合2時間) |
スプリントレトロスペクティブ | 振り返りと改善 | プロセスやチームの働き方を振り返り改善点を話し合う | スプリント終了時 | 最大3時間(2週間の場合1.5時間) |
■バックログリファインメント
プロダクトバックログのアイテムを見直し、詳細を追加したり、優先順位を調整したりすることを、「バックログリファインメント」と言います。通常スプリントの途中で行います。
次のスプリントで取り組むアイテムをより明確にし、チーム全員が理解できる状態に整えます。
スクラムの作成物
スクラムでは3つの作成物が定義されています。
作成物 | 概要 | いつ作るか | 役割 | 管理者 |
---|---|---|---|---|
プロダクトバックログ | プロダクト全体の「やることリスト」 | プロジェクト開始時に作成し、必要に応じて随時更新 | プロダクトの要件やアイデアをリスト化し、優先順位を設定。プロダクトの成長に応じて更新される | プロダクトオーナー |
スプリントバックログ | 現在のスプリントで行うタスクリスト | 各スプリント開始時(スプリントプランニングで作成) | スプリント内で「完了」するためのタスクを明確にし、進捗を追跡 | 開発チーム |
インクリメント | リリース可能なプロダクトの一部 | 各スプリントの終了時点で作成、リリース可能状態にする | 実際にユーザーが使える状態の成果物 | 開発チーム |
まとめ
スクラムの理論については以上です。
難しく感じますが、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)等の内容に比べると、
非常に「シンプル」と言われているので、しっかり理解して活用したいですね。
次回は、実際のスプリントのフローについて、詳しく説明します!
▼参考情報
SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発
スクラムガイド(Ken Schwaber & Jeff Sutherland)2020年11⽉版
IPA アジャイル領域へのスキル変革の指針「アジャイル開発の進め方」2025年5月版
参考情報:
スプリントプランニングとは?スクラムにおける役割や手順を解説
イテレーションとは?スプリントとの違いや開発プロセスを解説!
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